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【書評】翻訳家・三辺律子が読む『あなたを選んでくれるもの』ミランダ・ジュライ著、岸本佐知子訳

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【書評】
翻訳家・三辺律子が読む『あなたを選んでくれるもの』ミランダ・ジュライ著、岸本佐知子訳

『あなたを選んでくれるもの』ミランダ・ジュライ著、岸本佐知子訳(新潮社・2300円+税)

■奇跡起こした感性と行動力

 パフォーマンス・アーティスト、作家、映画監督、女優。多彩な顔を持つミランダ・ジュライが、今度はフォト・インタビュー集を発表した。

 インタビューの相手は、フリーペーパーに「売ります」の広告を載せた人たち。つまり、無名の一般人。とはいえ、なにか引き寄せる力があるのか、ミランダは実にさまざまな人と出会う。

 革ジャンを売りに出した男は60代後半で始めた性転換の途中だし、スーツケースを売りたい老女には、女優に似せたマネキンを部屋に置く孫がいる。足にGPS装置をつけた男(仮釈放中ということ)はしゃべり続けてミランダたちを帰そうとしないし、年齢不詳のタトゥーだらけの女は、バイブレーター付きの舌ピアスを試そうとしている。

 でもこれは、ミランダが彼らの多様な人生に共感するというような、ちょっといい話ふうの本ではない。むしろ彼女は時に辟易(へきえき)とし、「(LAという)街は、わたしがインタビューしているような人たちから、わたしを保護」してくれる、とさえ思う。そもそもこのインタビューは、執筆中の映画の脚本に行き詰まり、暇つぶしで始めたのだ。

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