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【書評】荒木和博・拓殖大教授が読む『アキとカズ 遥かなる祖国』喜多由浩著

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【書評】
荒木和博・拓殖大教授が読む『アキとカズ 遥かなる祖国』喜多由浩著

「アキとカズ」

拉致解決に必要な「力」実感

 本紙に1年にわたり連載された小説が本になった。『アキとカズ』はその名の通り7日間しかない昭和元年に生まれた双子の姉妹、昭子(あきこ)と和子(かずこ)の朝鮮半島に関わる激動の人生を中心に展開する小説である。さまざまなエピソードに実在の人物を擬した人物が登場するが、その中には私が直接知っている人も多く、単なる小説というより、事実の追体験のような感覚で読んでいた。その意味で本書は「小説以上、現実未満」と言える。

 後半からは拉致問題が入り、自衛隊を使った被害者救出の話が出てくる。これについては私が代表をしている予備役ブルーリボンの会で行っているシミュレーションとも重なっている。最後で横田めぐみさんを擬した被害者を救出し自分は海に沈んでいく「尾藤」は同会の伊藤祐靖幹事長(元二等海佐)がモデルと思うが、「本当にそうなっても彼はこんなことをつぶやきながら死んでいくだろうな」と思って読んでいた。

 昨年のストックホルム合意は既に破綻している。多くの人は口をつぐんでいるが、取り返すなら明らかに「力」が必要であり、そうしなければ見捨てるということだ。本書を読んでいると、それが実感として迫ってくる。この小説のように現実を動かせないかと思ってやっている身からすれば身につまされ、ときに胸が苦しくなる思いすら感じるのである。

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