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【書評】文芸評論家・水牛健太郎が読む『オールド・テロリスト』村上龍著

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【書評】
文芸評論家・水牛健太郎が読む『オールド・テロリスト』村上龍著

「オールド・テロリスト」

混迷する日本の姿映し出す

 冒頭、東京・渋谷のNHKの西口玄関でテロが発生、12人が死亡する。若者のグループが犯行を認めて集団自殺するが、その背後には老人たちの影がうごめいている。第2、第3の事件を経て、老人グループの狙いはやがて、日本を揺るがす原発テロへとエスカレートしていく。

 デビュー作の『限りなく透明に近いブルー』以来村上龍は、個人の行動や身体が国家や社会の定める枠組みを超え、時にそれを揺るがしていく様を描き続けてきた。初期の傑作『コインロッカー・ベイビーズ』で表された破壊への衝動は、『愛と幻想のファシズム』以降の作品では、日本の現状を踏まえた上での政治行動などの形を取って表現されることになった。本作もそうした系譜の作品である。

 本作では、2000年の『希望の国のエクソダス』に登場したフリーライターのセキグチが再び語り手となる。失業や家族との別れを経たセキグチはすっかり傷心の人物となっており、テロに立ち会う度にPTSDにさらされ、精神安定剤を噛(か)み潰しながら取材に当たる。行動を共にする女性カツラギも精神的な問題を抱えている。

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