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【話の肖像画】ブライダルファッションデザイナー・桂由美(4) 演劇の世界に逃げ込んだ

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【話の肖像画】
ブライダルファッションデザイナー・桂由美(4) 演劇の世界に逃げ込んだ

共立女子の同窓生でもある女優の小林千登勢さんのウエディングドレスをデザイン =昭和40年ごろ

 〈中学から大学まで通っていた共立女子学園では10年間、演劇部に所属していた〉

 自分で脚本を書いたり、演出をしたり、時には演じたり。授業が終わるとすぐ、演劇好きの友達と講堂に集まるんです。敗戦直後ですから、シンデレラストーリーのような演目に観客は沸くんですよ。「きょうはありがとう」「よかったよ」と先生方も生徒たちも皆、口々にほめてくれる。それが本当に感動でした。

 実は演劇に傾倒した理由は他にもあったんです。だいたい私、不器用なんですよ。裁縫に関して、学校の先生方が(洋裁のプロである)母と私を比べるのが嫌で。私は裁縫ではなく他に才能があるんだと思いたかったんでしょうね。

 高校3年生のとき、街で「文学座附属演劇研究所第一期生募集」という告知を見つけて受けてみたら、なぜか受かったんです。喜んでうちへ帰ると、母が真っ青な顔で合格通知はがきを前に、「これはなんですか」。「大学ときちんと両立させるから、とにかく1年やらせてくれ」と頼み、大学と文学座を半分ずつ行き来する生活を送りました。大学の友人たちには「ミスハーフ」と呼ばれてましたね。その1年間で、自分は本当に井の中の蛙(かわず)だったなと気付かされました。全国から集まった優秀な人たちを見て、自分の才能に限界を感じましたね。

 〈演劇研究所の卒業公演の後、文学座に残る道は選ばなかったが、演劇の世界で培った経験は、エンターテインメント性たっぷりのショー構成や演出に生かされている〉

 ファッションショーはやはり、最も好きな仕事のひとつですね。何よりもお客さまが感動してくれるとうれしい。それは結婚式にも通じるわけです。(聞き手 黒沢綾子)

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