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【話の肖像画】ブライダルファッションデザイナー・桂由美(4) 演劇の世界に逃げ込んだ

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【話の肖像画】
ブライダルファッションデザイナー・桂由美(4) 演劇の世界に逃げ込んだ

共立女子の同窓生でもある女優の小林千登勢さんのウエディングドレスをデザイン =昭和40年ごろ

〈ユミカツラ東京本店のある東京・南青山の自社ビルは、おとぎ話のお城のような外観が印象的だ。夢見る力や飽くなき美への渇望は、戦中戦後の困難な時代に思春期を過ごしたことと、関係があるのかもしれない〉

 中学2年のとき、終戦を迎えました。「どうして女は特攻機に乗れないのか」と陸軍大臣に手紙を書くほどの軍国少女でしたから、敗戦とはこういうものかとこたえました。

 きれいなものが乏しかった分だけ、憧れは強くなりましたね。(ドレスの細部を指して)例えばこういう刺繍(ししゅう)が仕上がってくるでしょ。跳び上がって涙を流さんばかりに感動するのは、私と最古参の社員だけ。他の人はポカンと見てる。こんなの当たり前でしょうって。トルコやインド、ポルトガルの島などに息づく、伝統のある特別な刺繍を求めたり、美しいものへのこだわりは人一倍強いかもしれません。

 戦後、新聞をひらくと陰惨な事件ばかり。憧れていた将校さんも軍服を脱げば、尾羽うち枯らすといった風体で…。現実を見たくなくて、演劇の世界に逃げ込みました。

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