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【書評】『村上さんのところ』村上春樹著、フジモトマサル絵

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【書評】
『村上さんのところ』村上春樹著、フジモトマサル絵

「村上さんのところ」

 面白かったことをあげる。世間では村上の愛読者を「ハルキスト」というが、チャラい印象があるので「村上主義者」といってほしい。一時期、「文章がうまい」藤沢周平にはまった。『ノルウェイの森』の緑のモデルは村上の愛妻といわれているのだが、妻本人は否定して怒っていた。あくまでフィクションとして読んでほしいと村上は望んでいる。

 回答はどれもユーモアを交えた優しいものが多い。人となりを知るには小説よりも本書の方だ。カフェで村上とコーヒーでも飲みながら気楽に人生相談をしているような親しみを覚えるからだ。それでいて村上文学の核ともいうべきことも語ってくれている。

 小説を書くときに村上は自身の内部に存在している「異界」にアクセスするという。「異界」とは深層心理に近いが、さらに奥深いものだ。そうなると『1Q84』の2つの月のある街とは「異界」だろう。軽い読み物と見えて侮れない本である。(新潮社・1300円+税)

 評・小林竜雄(脚本家)

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