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【書評】『村上さんのところ』村上春樹著、フジモトマサル絵

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【書評】
『村上さんのところ』村上春樹著、フジモトマサル絵

「村上さんのところ」

 ■気楽に読めるが侮れない

 村上春樹はデビュー以来、“文壇付き合い”をまったくしない孤高の人だ。文学賞の選考委員もしないし、テレビにも出ないとそれは徹底している。まさに〈日本のサリンジャー〉だ。これができるのはベストセラー作家ゆえだろう。メディアで自作の宣伝をしないですむからだ。同業者にねたまれる所以(ゆえん)である。そんな村上だが、大切に交流を持っている人たちがいる。本を買ってくれる愛読者たちだ。彼らだけには自分の素顔をさらしている。

 本書は村上が今年の前半、ネットに開設した期間限定サイト「村上さんのところ」で読者(中国、ドイツなど海外も含む)の質問メール、17日間に届いた約3万7千通の中から473通を選んで収めたものだ。このサイトは話題になった。原発についての意見を求められたとき、原子力発電所の原子力は英語でnuclear=核だから核発電所というべきだと提案した。村上らしく原発を扱うことの難しさを言葉から批判したのだった。これは「敗戦」を「終戦」といって本質を誤魔化(ごまか)すことに通じる。

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