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【美の扉】多角的にとらえる戦争の記憶 「ディン・Q・レ展」森美術館

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【美の扉】
多角的にとらえる戦争の記憶 「ディン・Q・レ展」森美術館

「農民とヘリコプター」2006年。ニューヨーク近代美術館で展示した際、米国の観客から「感情的な反応があった。罪悪感を解き放つ作用があったのかも」とディンは語る

 ワーグナーの「ワルキューレの騎行」を大音量で流しながら、敵の村落を容赦なく襲撃する米軍ヘリコプター部隊-。ベトナム戦争で思い浮かぶのは、この「地獄の黙示録」(1979年)の名シーンのように、米ハリウッド映画の中で見たイメージだ。

 戦争の狂気を描いた「地獄の黙示録」にしろ「プラトーン」(86年)にしろ、徹頭徹尾、米国人の物語だった。地上を逃げ惑う女性や子供、密林の中から這(は)い出てくるゲリラ兵…ベトナムの人々は、まるでアリの群れのように無個性に描かれていた。

 彼らはあの時代、何を思い、どう生きたのか。埋もれた記憶を掘り起こし、現代美術へと昇華させているのが、いま世界が注目するベトナム人アーティスト、ディン・Q・レだ。アジア初個展「明日への記憶」が東京・六本木の森美術館で開かれている。

 ベトナム戦争中の68年、カンボジア国境に近い町に生まれたディンは10歳のとき、ポル・ポト派の侵攻を逃れて家族とともに米国に渡った。写真とメディアアートを学び、初期から作品の題材にしてきたのは、米メディアが伝えてきたベトナムの情報と、自身や家族が持つ故国の記憶の間のズレ、葛藤だった。

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