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【書評】書評家・岡崎武志が読む『口笛を吹きながら本を売る 柴田信、最終授業』石橋毅史著

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【書評】
書評家・岡崎武志が読む『口笛を吹きながら本を売る 柴田信、最終授業』石橋毅史著

「口笛を吹きながら本を売る」

 ■毎日を「普通」に懸命に

 柴田信は現在85歳にして現役の書店員。神保町にある岩波ブックセンター代表として、週に4日、自宅から1時間以上かけて通勤する。教師からトラック運転手を経て書店員という変わり種で、本に関わって半世紀を経た。

 本の街・神保町をそぞろ歩けば、あちこちから柴田に声がかかる。そんな「顔」に2年も密着し、話を聞き出してできたのがこの本だ。

 著者は、出版業界紙で長く記者をしていた経験を生かし、柴田の書店人生と、現状について細かく話を聞き出す。「本には不思議な魅力がある、関わっている人をあきらめ悪くさせる」。これが著者と柴田の共通認識だ。

 柴田が本書でくり返しこだわるのは「普通の本屋」であること。昨今の新刊書店では雑貨を売ったり、喫茶部を併設することで売り上げを補填(ほてん)する。あるいは、カリスマ書店員と祀(まつ)り上げられ、雑誌やテレビで本を推薦する。そういう風潮が柴田はイヤなのだ。「いつもどおり、いままでどおり、毎日を一生懸命にやる」ことが、柴田の言う「普通」だ。

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