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【大学ナビ】針路を聞く 女子栄養大学・染谷忠彦常務理事

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【大学ナビ】
針路を聞く 女子栄養大学・染谷忠彦常務理事

 ■「ブランド力」急上昇の仕掛け人 理念磨き、社会・高校“市場”で勝負を

 女子栄養大学の染谷忠彦・常務理事は自他ともに認める「広報」のプロである。同大が各種の資格試験で成績を挙げ、社会的なブランド力を急速に高めている背景に、大学広報のレジェンドともいえるこの人のパワーがあった。「秘訣(ひけつ)は、大学のもつ理念を『宝物』に磨き上げること」。独自の大学広報を展開する哲学を聞いた。(平山一城)

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 --今年も、管理栄養士の国家試験は好成績です

 「228人が受けて、落ちたのは1人だけ。200人を超える学生が受験する大学は少なく、合格者の割合は飛び抜けていると自負しています。卒業生の管理栄養士は6千人を数え、ほかにも、医療現場で栄養サポートする臨床検査技師、学校の養護や栄養、家庭科の教諭として多くが活躍しています。大学の商品は学生です。こうした卒業生を輩出する大学を、まずは、多くの人たちに知ってもらう必要があったのです」

 --東洋大では入試戦略で、さらに秋田の国際教養大では準備段階から運営に携わり、短期間で成果を上げていますね

 「学生が商品なら、市場は高校や社会です。女子栄養大は伝統にあぐらをかき、少子化対応ができていませんでした。私は高校へのアプローチから始め、それまで年4回のオープンキャンパスを14回に増やし、さらに計量カップ、計量スプーンをキャラクターにしました。『大さじ1、カップ1』といまは誰にでも手軽に料理ができます。それを最初に考えたのは本学の創設者、香川綾です。キャラクターを大学案内に載せると、高校の先生や生徒の目がこちらに向く。オープンキャンパスでは、生徒と一緒にやってくる親を集めて私が話をしますが、子供を預ける価値のある大学ということがイメージしやすくなったのです」

 --なるほど

 「広報の材料は足元にあり、その使い方で宝物にもなる。それが広報の秘訣です。女子栄養大の母体、香川栄養学園は82年の歴史を『食は生命なり』という理念で貫き、国民の健康を支える栄養学を確立しました。その理論に沿った自前の学生食堂もあり、他ではまねができません。社会的な認知度を高めるために、このノウハウを活用しない手はないと考えました。企業の食堂や自治体の栄養管理に協力する産官学の連携です。そのころ、タニタ(体脂肪計メーカー)の社員食堂がカロリーや塩分を考えた健康料理として注目され、この食堂のリーダーが本学短期大学部の卒業生と話題になりました。すかさず、学食メニューの人気レシピが、2つの出版社から発行されると計40万部を超える異例の大ヒットになったのです」

 --まさに宝の山のようです

 「おかげで香川栄養学園の知名度は高まりました。それは、繰り返しますが、市場である高校や社会が求める商品(学生)をどうするか常に考えてきた結果です。しかし流行は冷めるものです。いま卒業生に学校や自治体に出向いて話をしてもらう機会を設けていますが、大学改革は『顧客』の意見を知ることから始まる。そのことを教職員に徹底していきたい。さらに、地方や企業で活躍する卒業生(校友)、在校生の保護者の方々にも意見を聞き、学園の結束強化を図っていきたい。それがさらなる認知度、就職力のアップにつながると考えています」

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【プロフィル】染谷忠彦

 そめや・ただひこ 東洋大学を卒業。母校の運営に携わる。2003年、女子栄養大理事・広報部長兼理事長付部長に転じ、昨年、常務理事に就任した。現在も、国際教養大はじめ多くの大学、高校を支援する。72歳。

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