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【広角レンズ】谷崎潤一郎没後50年 古典的かつ最先端、妖艶、豊壌な物語

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【広角レンズ】
谷崎潤一郎没後50年 古典的かつ最先端、妖艶、豊壌な物語

谷崎潤一郎の没後50年に合わせ、書簡集や対談集、作家や評論家らによる谷崎論を収めたムック本などが刊行されている

 男女の妖艶(ようえん)で倒錯した性と美の世界を追求し、ノーベル文学賞候補でもあった文豪・谷崎潤一郎(1886~1965年)。没後50年の節目となる今年は新たな全集刊行が控え、創作の秘密に迫る資料の公表も相次ぐ。豊壌な文学の普遍性と今日性があらためて注目されている。(海老沢類)

                   

 ◆自然主義と一線

 「谷崎文学の恋愛は、誰かと知り合って心をたぎらせ、幸せな家庭を…というイメージとは違う。こんがらがった恋愛です」

 今月中旬、横浜市の神奈川近代文学館。「痴人たちの〈恋〉と〈愛〉」と題した講演で、作家の平野啓一郎さん(39)は約220人の聴衆に語りかけた。

 ページをめくれば、言葉通り、非日常の恋愛が広がる。明治43年発表の出世作『刺青(しせい)』では女性の足に魅入られた男が破滅の道をたどり、大正13年に連載された『痴人の愛』で描くのは肉体的魅力にあふれる年下妻に翻弄されるサラリーマンの陶酔境。自然主義全盛の文壇にあって、フェティシズムやマゾヒズムが充満した独自の官能世界を築く。一方で、戦争をまたぎ、没落する大阪・船場の商家の四姉妹を描く『細雪』のような優美な物語も残した。

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