産経ニュース

遠くて近い井上有一展 書を超えた圧巻の「一字書」

ライフ ライフ

記事詳細

更新


遠くて近い井上有一展 書を超えた圧巻の「一字書」

「音」1972年

 前衛的な書で知られる書家、井上有一(1916~85年)の作品を集めた「遠くて近い井上有一展」が東京・虎ノ門の菊池寛実記念智美術館で開かれている。

 有一の代表的な作品に、漢字の一文字を大きく書いた一字書がある。書でありながら、書のイメージを超えている。たとえば「塔」は、ずぶとい線で構成された建物の姿が浮かび上がり、「鷹」では、力強い鷹のたたずむ姿が見えてくる。漢字が絵になっていく。その造形は絵画を思わせる。

 有一は「筆法とか書法とかややこしいことは犬に食われてしまえ」といい、ときには書き順を無視。「貧」は、下から書き出し、最後に上部を書いていったりもした。完成した作品はまるで人の像だ。あるいは黄ばんだ唐紙にくっきりとした黒い造形が表れた「音」は、もはや抽象絵画といっていい。

 固定観念や枠にとらわれず奔放に創作した。漢字をモチーフに絵を描いたといっていいかもしれない。そんな作品は、日本よりも海外で注目を集めた。サンパウロビエンナーレ(1957年)に出品した「愚徹」は、英国の高名な美術評論家、ハーバート・リードの著書『近代絵画史』でジャクソン・ポロックらの巨匠とともに紹介された。ドクメンタ(59年、ドイツ)をはじめとする現代美術の国際展にも出品され、米抽象表現主義の画家、ロバート・マザウェルら現代アーティストに影響を与えた。

このニュースの写真

  • 遠くて近い井上有一展 書を超えた圧巻の「一字書」

「ライフ」のランキング