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【書評】神戸大名誉教授・吉田一彦が読む 『反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体』森本あんり著

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【書評】
神戸大名誉教授・吉田一彦が読む 『反知性主義 アメリカが生んだ「熱病」の正体』森本あんり著

『反知性主義』

 ■猥雑で革新的な力の根源

 このごろ「反知性主義」なる言葉を耳にするようになったが、知的好奇心を大いに喚起してくれる興味深い本が出版されたものである。

 この反知性主義というのは一般に決して通りの良い言葉ではない。特にわが国では「最近の若者はスマホにかまけて本を読まない」といった類の否定的な意味合いで用いられることが多く、アメリカでの用法とは趣を異にしている点に注意が必要である。

 そもそもこの「反知性主義」という表現の起源は、1952年の大統領選挙に端を発している。共和党候補のアイゼンハワーは、第二次大戦中の連合軍最高司令官としてノルマンディー上陸作戦を指揮したことで知られる。しかし政治には無関心で学費不要の軍学校を選んだ庶民の子であった。対立候補はプリンストン大学を優秀な成績で卒業したアドレー・スティーブンソンで、祖父は副大統領を務めたこともある家柄である。

 結果は予想に反してアイゼンハワーの圧勝となり、「知性に対する俗物根性の勝利」と言われ、反知性主義が大いなる高まりを見せたのである。アメリカの大統領に知的エリートが歓迎されないことは、最近の大統領を幾人か思い出すだけで納得がいく。

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