記事詳細
有人火星探査の足掛かり
宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月面探査機「SLIM」の想像図(JAXA提供)
月探査機スリムが挑むピンポイントの着陸は宇宙大国の米露も獲得していない独自の先進技術だ。JAXAが大学などと共同研究してきたもので、今後の月や火星の探査を支える柱として期待される。
スリムの着陸候補地は探査機かぐやが発見した縦穴付近。斜面に挟まれ、着陸が困難だった場所だ。月ではかぐやの観測で詳しい地形が明らかになったことで、探査したい場所に狙いを定めて着陸を目指す機運が高まっている。これに応えるため、スリムは地形を即座に判断して機体の位置を推定したり、未知の障害物を上空から迅速に検知したりする新技術を実証する。
米国はJAXAが検討しているかぐやの後継機に、自国の資源探査車を搭載するよう提案している。かぐや後継機はスリムの着陸技術を使う見込みで、月の資源をめぐる国際的な議論で日本が発言力を強めることにもなりそうだ。
月探査は火星への足掛かりとしても重視されている。スリムの究極の目標は、米国が2030年代以降に目指す有人火星探査で日本が存在感を発揮することだといえる。目的地に正確に降り立てば、効率的な探査が可能になるからだ。
日本が有人火星探査に参加するかは未定だが、月面で高度な技術力を示すことができれば、役割分担などの国際交渉を有利に展開できると期待される。(草下健夫)
