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【書評】編集者・植草信和が読む『狗賓童子の島』飯嶋和一著

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【書評】
編集者・植草信和が読む『狗賓童子の島』飯嶋和一著

「狗賓童子の島」

緻密な描写と堅牢な物語

 飯嶋和一の6年ぶり、8冊目の新著である。ほぼ4年ごとにしか新刊が出ない「オリンピック作家」ゆえに待たされることには慣れているが、本書『狗賓童子の島』上梓(じょうし)までは渇望の6年間だった。

 弘化3(1846)年、後醍醐天皇流刑伝説がある隠岐島に送られた15歳の西村常太郎。大塩平八郎の挙兵に連座した父・西村履三郎の罪による「処罰」だった。

 本書はその常太郎の目を通して、大塩平八郎の乱から隠岐騒動までの激動の時代を描いた歴史小説だ。

 大塩の「檄文(げきぶん)」を諳(そら)んじる島の人々は彼の高弟である履三郎を敬っていて、その遺児である常太郎を慈しむ。

 翌年、16歳になった常太郎は、狗賓(ぐひん)(天狗の異名)が宿るという御山の千年杉へ、初穂を捧(ささ)げる役を命じられる。隠岐島の守護神である狗賓の童子、つまり神の子になった常太郎は医術を学び医師として窮民救済に邁進(まいしん)していく。

 常太郎が商船が島にもたらしたコレラの治療に奔走する一方では、腐敗著しい幕府と島根藩の苛政に対して島民は反旗を翻そうとしていた。

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