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【話題の本】『吉野弘詩集』 やさしく心に寄り添う

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『吉野弘詩集』 やさしく心に寄り添う

【話題の本】『吉野弘詩集』(ハルキ文庫・680円+税)

 昨年1月に87歳で亡くなった詩人の吉野弘さん。やさしい言葉で心の深い部分を突く代表的な詩97編を収めた文庫が、異例のヒットとなっている。

 平成11年に発売され、15年近くかけて6万部超を発行したロングセラー。今年1月、吉野さんの詩を特集したNHKの番組が放送されると爆発的に売れ始め、23刷22万4000部にまで伸ばした。

 〈二人が睦まじくいるためには/愚かでいるほうがいい/立派すぎないほうがいい/立派すぎることは/長持ちしないことだと気付いているほうがいい〉。そう始まる「祝婚歌」は共感を誘い、結婚式でもよく使われる。

 〈-I was born さ。受身形だよ。正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。自分の意志ではないんだね-〉。英語を習い始めた少年と父が対話する散文詩「I was born」では、文法上の小さな発見が生と死を考えるきっかけになる。

 角川春樹事務所の担当編集者、三輪侑紀子さんは「折れかけた心に寄り添うような詩を平易な言葉で書く。多くの人が励まされている」。じわりと効いてくる温かな詩が現代詩読者の裾野を広げている。(ハルキ文庫・680円+税)

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