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【追悼】塩月弥栄子さん 「あの家にはお茶がある」

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【追悼】
塩月弥栄子さん 「あの家にはお茶がある」

インタビューに答える茶道家の塩月弥栄子さん =平成25年4月

 「思わず、引っぱたきたくなりますね」と激しい言葉が出たのは、電車の中で化粧をして何ら恥じ入ることのない若い女性のこと。「どんな美人でも『恥じらい』を忘れた人はきれいに見えないものです。女性だけではありませんよ。人前でヒゲを抜いたり、爪を切ったり、靴下を履き替えたり、携帯電話で大声で話したり…」

 塩月さんは裏千家の家元の家(14代家元の長女、千玄室前家元は弟)に生まれている。作法やエチケットについては幼いころから「お茶」のおけいこを通じて自然に教わったという。

 京都では昔から『あの家にはお茶がある』という言い方をする。それは茶道そのものではなく、「季節感」や「もてなしの心」を持った家のことを指すのだ、と。笑顔や気働きの大切さ。年を取ってからもチャレンジ精神を忘れない…。亡くなるまで、日本人へ向けてのメッセージを発信し続けた。

 「若い人たちの上に立つおじさん、おばさん世代こそがしっかりしなきゃダメなのよ。だから、あなたもぜひ(お茶の)おけいこにいらっしゃい」。別れ際にそう声をかけてくれたときの嫋(たお)やかな笑顔が忘れられない。3月8日、老衰のため、96歳で死去。家族によれば「眠るように穏やかな」大往生だった。(喜多由浩)

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