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【追悼】塩月弥栄子さん 「あの家にはお茶がある」

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【追悼】
塩月弥栄子さん 「あの家にはお茶がある」

インタビューに答える茶道家の塩月弥栄子さん =平成25年4月

 昭和の時代、「冠婚葬祭入門」は“1家に1冊”の感があった。日本の伝統文化のしきたり、作法などを分かりやすく解説してくれる“虎の巻”。わが家の本棚にもあったから、塩月さんのことをずっと「茶道家」ではなく「マナー・作法の人」と思い込んでいたぐらいである。

 発刊は昭和45(1970)年。日本は高度経済成長の階段を猛スピードで駆け上がり、世界2位の経済大国になっていた。同時に「核家族化」が急速に進む。昔なら、こうした決まり事を教えてくれた“おばあちゃんの知恵袋”がない…。

 こんな時代を背景に、「冠婚葬祭入門」はシリーズ累計で約700万部の大ベストセラーを記録する。ドラマ化、映画化もされ、塩月さんは一躍「時の人」となった。

 「『衣食足りて礼節を知る』というでしょ。日本人の生活にようやく余裕ができて、ニーズに合ったのだと思いますね。でも、お年寄りから子や孫に伝えることができなくなったのは本当に残念なことですよ」

 数年前にインタビューしたとき、娘さんの助けを借り、言葉を探しながらの会話ではあったが、「日本の伝統文化」や「日本人の心」が薄れてゆくことに対しては怒りにも似た強烈な危機感をにじませた。

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