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【新・仕事の周辺】津田直(写真家) サーメ人が受け継ぐ知恵とぬくもり

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【新・仕事の周辺】
津田直(写真家) サーメ人が受け継ぐ知恵とぬくもり

(C)NAO TSUDA

 写真家である僕は、1年のうち7~8カ月を旅や移動に費やす日々を送っている。今年はラップランド(北極圏)に暮らす先住民族サーメ人に会いに行くことから始まった。目的地へは日本からフィンランドのヘルシンキまで10時間半、乗り継いで北部のイヴァロまで1時間半のフライトだった。

 文明の利器を駆使すれば、世界中の地域が身近になったのではないかと錯覚してしまいそうになる。しかし旅人が未知なる領域に足を踏み入れるとき、翼に乗って大海原や数えきれない峰々、大河を飛び越えてきたことを決して忘れてはならない。僕は機上でいつも眼下に見える小さな家の灯や谷川に寄り添う細い山道などを眺めながら、人類が歩んできた永き旅路に想(おも)いをはせる。

 たどり着いたフィンランド北部は、1月ということもあり、日中でも気温はマイナス20度を下回る程の寒さだった。ここに暮らす極北の民であるサーメ人を知ったのは数年前。数万年も前にシカの群れを追ううちに、極北の土地に達し、やがて定住することになった人々だという話を聞いたのだった。冬季には太陽がほとんど昇らない極夜という厳しい自然環境では、動物との共存が生きる術だったのだろう。

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