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【書評】文化部編集委員・篠原知存が読む『探検家の日々本本』角幡唯介著 常識の外側に飛び出ること

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【書評】
文化部編集委員・篠原知存が読む『探検家の日々本本』角幡唯介著 常識の外側に飛び出ること

「探検家の日々本本」

 前口上に、こんな一文がある。〈いわゆる通常の読書エッセイとは異なり、読んだ本の内容についての論評や解釈を述べたものではなく、それぞれの本が私に与えた影響のようなものについて書いているので、取り上げた本の内容についてほとんど触れていない文章もある〉

 通常でなければどんな本かというと、やっぱり「探検もの」と呼びたい。著者は『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』『雪男は向こうからやって来た』『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』などの作品でノンフィクション賞や文学賞を総なめにしている探検家だ。

 作品の特徴のひとつが自分ツッコミ。ヒラリーやアムンゼン、あるいは植村直己といった先達とは違って、地球上に空白地域がほとんどなくなってから「探検家」を目指した著者は、そもそも「探検ってなんだろう」という問いから始めざるを得なかった世代だ、と告白している。

 GPS携帯が当たり前になった現代にも「探検」は可能なのか? その問いに身を張って挑む。死のふちにギリギリまで近づきながら、軽やかな文章で読者を和ませる。面白くて読み進むうち、ふと真理めいたものに触れてしまう。そんな探検家のスタンスは、読書体験においても変わらない。

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