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【書評】
論説委員・木村良一が読む『三浦雄一郎の肉体と心 80歳でエベレストに登る7つの秘密』

冒険家の三浦雄一郎さんが80歳という信じられない高齢で、世界最高峰のエベレスト(8848メートル)の登頂に成功できたその謎が、やっと解けたような気がする。
著者は「チーム三浦」のドクターとしてエベレスト遠征に同行した女医さん。国際山岳医の資格を日本人として初めて取るなど熱心に山岳医療の啓発に取り組んできた。
そんな彼女のもとに三浦さん側から依頼がきたのが、平成24年2月だった。彼女いわく、そのころの三浦さんは高血圧、脂質異常症、狭心症、不整脈、白内障、肥満…とかなりの数の病気を抱える立派すぎるくらいのメタボおじさんだった。無理をすれば心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まることも十分あり得た。
しかし70歳と75歳でのエベレスト登頂に続き、25年5月には、史上初の80歳登頂を成し遂げる。とても常識では考えられない偉業だった。
80歳登頂の後に東京・内幸町の日本記者クラブで行われた会見で、三浦さんは「ゆとりある日程のおかげで、昼寝をしたり、本を読んだりできた。年寄りの半日仕事が良かった」と話していた。