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【夫婦の日本史】
第98回 幕府創業を支えた「糟糠の妻」 渡部裕明

源頼朝(1147~1199年) 北条政子(1157~1225)
源頼朝にとって、北条政子という妻を持った意味は何だったのだろう。2人の結婚は治承元(1177)年だった。頼朝が31歳で、政子は21歳。同じころ長女の大姫(おおひめ)が誕生しているから、今風な「できちゃった婚」だったのだ。
しかしこのときの頼朝は、一介の流人(るにん)にすぎなかった。「平治の乱」(1159年)で敗れたためである。そして政子の父・時政はこの地の土豪で、頼朝の監視役でもあった。
全盛の平氏にかげりが生じ始めていたとはいえ、源氏の御曹司を婿とするにはリスクが大きい。悩みつつも許したのは、政子が自らの意思で結婚したいと言ったからである。
3年後、頼朝のもとに平氏打倒へ立ち上がるよう求める以仁王(もちひとおう)の令旨(りょうじ)が届いた。周囲にも平氏に不満を抱く武士はいる。立つしかないと、腹をくくった。この決断が鎌倉幕府を誕生させる道へとつながった。