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【歴史の交差点】明治大特任教授 山内昌之 「ふりかえれば未来」

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【歴史の交差点】
明治大特任教授 山内昌之 「ふりかえれば未来」

 中国唐代の歴史家・劉知幾の『史通』は、遠い昔に互いに覇を争い勝負の行方が定まらなかった時代でも、歴史家は他国のよい点を必ず称賛して書き、自国の悪い点も隠しだてしなかったと述べる。ところが近い時代になると歴史家は公平に記録せず、自国の優れた点を自慢し他国の劣った点をあげつらうようになった。「それを触(ふ)れ文(ぶみ)に載せて、相手をあげつらうことは許せるが、それを史書に載せて出鱈目(でたらめ)な話を作り上げることは適当でない」(内篇巻7、西脇常記訳注)。これは拳拳服膺(けんけんふくよう)すべき正しい史論になっている。

 モンテーニュによれば、品性の堕落は真実を追放する点に現れるという。他国の歴史的行為については、あれこれの数字を改変してまで、極端な解釈を世界中に広める国々もある。世界史には互いに相手を嘘つきよばわりし面罵した民族や国もあった。しかし教訓とすべきは、ギリシャ人とローマ人の偉い将軍でさえ、口で報復しあうだけで、それ以上の重大な結果をつくらなかったことだ(『エセー5』第18章)。

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