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【書評】『恋するソマリア』高野秀行著

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【書評】
『恋するソマリア』高野秀行著

『恋するソマリア』

 ■謎の国家解明に挑む苦悩

 アフリカ東北部に暮らす秘境民族・ソマリ人という謎めいたテーマで2013年度のR-40本屋さん大賞、講談社ノンフィクション賞などを受賞した『謎の独立国家ソマリランド』。ただ著者の“ソマリ熱”はこの500ページの大作をもってしても冷めなかった。

 前作が「国際社会から全く認められていないのに平和な国・潜入記」だとしたら、続編となる本書は「なぜそんなことが可能なのか?」、地域を構成するソマリ人のメンタリティーの深淵(しんえん)に迫る。正直、前作を未読だと「国家」成立の謎、氏族社会の謎、海賊や内戦の謎など、不明な部分も多いだろう。ただ著者の徹底した読者目線での語り口はソマリ初心者(?)もとりこにする。「秘密のベールをめくるたびに新たな美貌が見え、さらにその下に別のベールが隠されている」-その謎をソマリ語の勉強、料理、音楽、果ては銃撃戦などを縦横に取り混ぜながら解き明かそうとする。辺境歴30年のキャリアをもってして初めての苦悩にもだえながら。

 「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それをおもしろおかしく書く」作家、高野秀行。

 本書で初めて彼の作品に触れる方はソマリ人よりも、著者の人柄そのものにも興味をもたれるはずだ。「なぜそこまでやるの?」と身内ならずとも心配させる著者は、相手が誰であれ、その人と個人として向き合い、共に考え、時を過ごすことをなにより大切と考える。そして自分を解き放ち相手と向き合う。

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