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【歴史の交差点】明治大特任教授・山内昌之 イスラム国とクルド独立

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【歴史の交差点】
明治大特任教授・山内昌之 イスラム国とクルド独立

 ISは、6月に指導者バグダディをカリフ(預言者ムハンマドの代理人)とするイスラム国家の建設を宣言した。こうしてシリアとイラクとの国境が無視されると、領土的に新たな「無人地帯」が現れた。それは、クルド人とISが影響力を競い合う地域と言い換えてもよい。

 国境線の希薄化はクルドにも利点がある。12年夏にシリアのクルド人地域(ロジャヴァ)は事実上の自治を獲得し、KRGとの協力と新たな共通国境を模索した。ISによるKRGとロジャヴァへの攻撃は、対立していたシリアとイラクのクルド人に共通の敵と対決する必要性を痛感させるに至った。

 この機運は、4国にまたがるクルディスタンの全体に広がった。イラン・クルディスタン民主党の部隊は、KRG国防省の指揮下にあるアルビルの南西地域に派遣され、トルコのクルディスタン労働者党とそのロジャヴァの直系組織たる人民保護軍は女性も含めてシリアとイラクでISと戦っている。

 いちばん劇的な変化は、長くイラクの一体性を主張してきた米国で起きた。オバマ大統領はISに対抗するクルド支援の必要性に寄せて、イラクと別にクルドの名を明示的に挙げるようになった。米国をはじめとする有志連合による空爆は、不活発なイラク国防軍のためでなく、戦場のクルド部隊のためなのである。有志連合はKRGに依拠する以外に対IS地上戦略の足がかりがないのが現状なのだ。

 クルド民族は、かれらの歴史と伝統において異次元の世界に入ったといえよう。その独立国家宣言は時間の問題のように思える。(やまうち まさゆき)

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