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【書評】映画評論家・垣井道弘が読む『本多猪四郎 無冠の巨匠』切通理作著

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【書評】
映画評論家・垣井道弘が読む『本多猪四郎 無冠の巨匠』切通理作著

『本多猪四郎 無冠の巨匠』切通理作著(洋泉社・2500円+税)

人生観、世界観を浮き彫り

 今年の夏は1954年製作の元祖「ゴジラ」とハリウッド製「GODZILLA」が相次いで劇場公開され、本多猪四郎監督の業績が改めて注目された。日米合作も演出したモンスターマスターことホンダ・イシロウの名前は、海外でもよく知られている。

 特撮を駆使した怪獣映画や空想科学映画は、息の長いブームになり「空の大怪獣ラドン」(56年)や「モスラ」(61年)、あるいは「ガス人間第一号」(60年)などの秀作も生まれた。こうした特撮の作品群を通して、本多の功績を検証したのが本書である。

 終戦から9年後に製作された「ゴジラ」は、口から放射能火炎を吐き出す巨大怪獣のビジュアルと、焼け野原の東京を再現したドキュメンタリーのようにリアルな演出が出色だった。殺される側の無念さと同時に殺す側の快感をも引き受けた、自己破壊的なスペクタクルだという著者の分析には説得力がある。

 1911年生まれの本多猪四郎は、22歳のときに東宝の前身であるP・C・Lに入社するがすぐに徴兵され、3度の応召で足かけ10年の軍隊生活を送った。終戦時に中国大陸で捕虜になり、復員したときに列車で被爆した広島の焼け跡を通ったという。

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