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【書評】『甘い漂流』ダニー・ラフェリエール著、小倉和子訳

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【書評】
『甘い漂流』ダニー・ラフェリエール著、小倉和子訳

】『甘い漂流』ダニー・ラフェリエール著、小倉和子訳(藤原書店・2800円+税)

 ■洗練された自伝的小説の趣

 1976年、一人の青年がモントリオール(モンレアル)にたどり着く。彼は、ハイチのジャン=クロード・デュヴァリエの独裁政権下で身の危険を感じて国外脱出を図った元ジャーナリスト。『甘い漂流』の主人公である。本書は、カナダのハイチ系ケベック作家ダニー・ラフェリエールが、モンレアル到着後の1年間の日々の出来事と心象風景を綴(つづ)った自伝的小説。

 「ぼく」は、移民支援センターで得た支援金をもとに、ゴキブリとネズミが同居する部屋を借りる。カナダは移民者も亡命者も受け入れる国。人道的立場を強調する政府の政策から、亡命者にはより手厚い保護がある。しかし主人公の「ぼく」は、亡命申請は拒む。ハイチでは、反体制派の急先鋒(きゅうせんぽう)紙のジャーナリストをしてきたプライドと祖国への思いが、それを許さない。それに、「殺される前に逃げたのだから」。

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