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【書評】『浮浪児 1945-戦争が生んだ子供たち』石井光太著

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【書評】
『浮浪児 1945-戦争が生んだ子供たち』石井光太著

『浮浪児 1945-戦争が生んだ子供たち』石井光太著(新潮社)

 おにぎり一つのために体を売る女の子。寝床を「ヌマカン(沼津旅館)」に求める-沼津行きの最終列車に無銭乗車し、朝に戻って来る子。ホステスの家に身を寄せるが、夜な夜な「下半身を舐(な)める」ことを強いられる男の子。精神を病んで、犬の糞(ふん)を口に入れて亡くなる子。100人近くに取材した著者は、その壮絶さを淡々とした筆致で描く。

 浮浪児たちに温かい手をさしのべた人が登場し、救われた気分になった。終戦翌年の1月に中野区の母娘が自宅を開放した「愛児の家」。上野で見つけた浮浪児たちを連れ帰り、衣食住を提供し、就学や就労をさせたのだ。しかし、そこに暮らした後、立派に社会に出た79歳の男性が、施設で育ったことは話せても、浮浪児だったことは妻にすら話せないというのが重い。

 戦後69年、浮浪児だった人たちが話せるぎりぎりのタイミングでよくぞ出た。日本史の副読本になるべき一冊だ。(新潮社・1500円+税)

 評・井上理津子(フリーライター)

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