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【書評】『浮浪児 1945-戦争が生んだ子供たち』石井光太著

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【書評】
『浮浪児 1945-戦争が生んだ子供たち』石井光太著

『浮浪児 1945-戦争が生んだ子供たち』石井光太著(新潮社)

 ■資料と証言で描く「壮絶さ」

 〈現在の私には死よりほか、苦しみを救つてくれるものはございません。(中略)いまの私には、死はただ一ツの人間らしい道を歩んだということのできる方法です〉

 自死した15歳の少年のそんな遺書から始まる。本書は、先の戦争で家族を失い、上野を中心に「浮浪児」となった子供たちの実態を、残された資料と当人たちの証言から追いかけた力作だ。

 私はかろうじて町で「傷痍(しょうい)軍人」を見かけた世代だが、路上をさまよう浮浪児の存在は、野坂昭如『火垂るの墓』や木内昇『笑い三年、泣き三月。』などで読んだにすぎなかった。戦災孤児が約12万人いて、1948(昭和23)年版『朝日年鑑』によると浮浪児数は推定3万5千人にのぼったそうだ。

 上野駅の通路を住処(すみか)にした彼らは、野良犬と一緒にゴミを漁(あさ)り、犬や虫を貪(むさぼ)り、闇市で食べ物を盗んで食いつないだ。警察の「狩り込み」によって収容された施設で、いわれなき体罰を受けるなどして脱走。路上に舞い戻り、愚連隊(ぐれんたい)になるより他に道がない者も多かったと本書でリアルに知り、彼らこそ戦争の一番の被害者だった、戦後の重要な裏面史だと強く思った。

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