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【書評倶楽部】タレント・麻木久仁子 『認知症はこわくない』高橋幸男編著

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【書評倶楽部】
タレント・麻木久仁子 『認知症はこわくない』高橋幸男編著

「認知症はこわくない」

■「患者本人の視点」に気づく

 認知症の壮絶な実態を描いた有吉佐和子の『恍惚(こうこつ)の人』の発行が1972年。認知症とはなんと恐ろしいものかと衝撃を受けた人も多かっただろう。あれから42年。介護疲れの結果起こった殺人事件や無理心中事件、そこまでに至らずとも家庭を崩壊させるには十分であった介護の負担についてのあまたの体験談を通して、特定の誰かや一家庭の中のみに問題を押し付けることが、いかに悲劇を招くかを私たちは知った。介護保険の議論もあって、認知症を家庭内に閉じ込めないこと、福祉や介護のプロフェッショナルの役割が重要であること、高齢化社会においては誰にでも起こりうるリスクとして社会全体で担うべき負担であることがいまや常識となった。

 が、この本を読んで、とても大切な視点がひとつ、十分に顧みられていなかったことに気づかされたのである。

 それは「認知症の患者本人の視点」である。

 「えー、認知症の人は、ぼけてしまっているから悩むも何もないのでは?」「どうせ何もわからないでしょう?」

 しかし認知症も初めから何もわからないわけではない。患者本人は、少しずつ進んでいく症状と直面しながら、底知れない不安と孤独、著者の言葉でいえば「寄る辺なさ」に苦しんでいるのだ。それが家族などの近しい人にうまく伝えられないことが孤独をより深くし、徘徊(はいかい)・暴言・暴力などの行動を深刻化させることもあるという。それがまた家族を苦しめる。

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