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【書評】どちらにも働く予測の力 『「期待」の科学 悪い予感はなぜ当たるのか』

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【書評】
どちらにも働く予測の力 『「期待」の科学 悪い予感はなぜ当たるのか』

 今回のワールドカップ(W杯)では1次予選で敗退してしまったので証明できなかったのだが、イングランド代表はW杯のPK戦で勝ったことがないというジンクスがあった。いったん、そう言われ始めると選手たちは悪い予感に捉われて強いプレッシャーにさらされて萎縮し、力が発揮できなくなるためである。

 人間は未来を予測する能力を持つ唯一の動物であり、予測することによって自然に大きな変化があっても巧(うま)く対処できたのだが、マイナスの予測によって不安に頭が支配されると予測通りのマイナスの結果になってしまうのだ。反対にプラス思考の予測によって脳が活性化されると、なんでも好転して意欲満々の生き方にもなる。もっとも、ギャンブル依存症は「勝てるかもしれない」という期待に常につき動かされる結果、自制心がなくなるためらしい。予測の力はプラス・マイナスどちらにも働き、「予測は自己成就」するのである。

 本書は、人間が持つ未来への予測・期待・予期・予感などが人間の思考や行動に及ぼす影響を、さまざまな心理学的実験例を示しながら論じたものである。デカルトは「我思う」と簡単に言ったが、認識や思考には実に多くのバイアスがあって、人間は一筋縄では捉えきれないことがよくわかる。人間観察に大いに応用できそうである。

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