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【書評】文芸評論家・池上冬樹が読む『怪談』小池真理子著

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【書評】
文芸評論家・池上冬樹が読む『怪談』小池真理子著

『怪談』小池真理子著

 でも読者が惹(ひ)かれるのは、驚きの結末や真相ではなく、いつ足許(あしもと)が崩れるかわからない現実の中で人物たちが覚える淋(さび)しさ、哀(かな)しさ、嬉(うれ)しさ、不安などの感情である。誰が生者で、誰が死者なのではなく、人も霊もみな温かな感情を抱き、ときに歓喜し、ときに絶望する姿が切ないのである。ありえない世界なのに近しく、戦慄は床しく、怖いのになぜかよろこばしい。

 喚起力みなぎる鮮やかな文体もそうだが、この世とあの世の繋(つな)がりを描かせたら、小池の右に出るものはいない。名手小池が真骨頂を見せつける傑作短篇集である。(集英社・1400円+税)

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