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【子供たちに伝えたい日本人の近現代史】(72)無理通す東京裁判に批判

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【子供たちに伝えたい日本人の近現代史】
(72)無理通す東京裁判に批判

 ■日本は満州事変以来謀議を重ねた?

 昭和22(1947)年5月1日と2日、日本海に面した山形県酒田市の商工会議所で、極東国際軍事裁判(東京裁判)の臨時法廷が開かれた。

 昭和6年に起きた満州事変に関し当時の関東軍作戦主任参謀で、酒田の北20キロの農場で病気療養中の元陸軍中将、石原莞爾を尋問するためだった。ニュージーランド人のノースクロフト判事をはじめ検事、弁護人、通訳、内外の新聞記者ら100人近くが東京から夜行列車で乗り込んできた。

 米国など連合国、つまり戦勝国は裁判で日本が満州事変前後から「共同謀議」を重ね、他国を侵略し「平和に対する罪」を犯したという構図を描こうとしていた。そのため「起点」とした満州事変について石原の証言を得ようと、異例の出張尋問となったのだ。

 だが信奉者の青年が引くリヤカーに乗って現れた石原は、冒頭発言で裁判官らの意表をつく。

 「満州事変の中心はすべて自分である。自分を戦犯として連行しないのは腑(ふ)に落ちない」

 裁判では満州事変当時、石原の上司で関東軍高級参謀だった板垣征四郎元陸相らが起訴されていた。だが事実上関東軍を指揮、満州(中国東北部)の張学良軍と戦った石原は逮捕も起訴もされなかった。

 戦勝国側が共同謀議の「首謀者」と見ていた元首相、東条英機と犬猿の仲で、支那事変(日中戦争)拡大に反対したためなどといわれる。いずれにせよこれも東京裁判の矛盾点のひとつで、痛いところを突いたといえる。

 石原は、事変当時の満州の情勢について「一触即発、あたかも噴火山上にあるままに放置されていた」と、極めて不安定な状態にあったと証言した。この地の軍閥を率いる張学良が中国国民党の軍門に下り、平穏裏に中国の支配下にあった満州を日本が武力で侵犯した、としたい米国人ダニガン検事の尋問を論破したのだ。

 さらに起訴されている板垣や奉天特務機関長だった土肥原賢二らが、軍中央の指示で動いていたとしようとするダニガンの誘導尋問にも乗らなかった。

 戦勝国側が満州事変を共同謀議の起点にしようとしたのは、昭和16年12月からの日本の対米英戦争はハル・ノートなどで追い詰められた結果であることを、自らも分かっていたからだとされる。そうではなく、満州事変以来の一貫した侵略戦争としたかったのだ。

 だが塘沽(タンクー)停戦協定による満州事変の決着から昭和12年の日中戦争勃発までは4年以上がたっている。しかも日中戦争の拡大には中国側の責任や偶発的な面も強く、当時の軍人たちが明確に侵略的な思想を持っていたとも思えない。「共同謀議」による一連の「犯罪」というのはフィクションに過ぎた。

 それでも裁判は日本側の抗議やあらゆる証拠を抹殺、昭和23年11月12日、A級戦犯として起訴した25人全員を有罪、うち東条、板垣、土肥原ら7人を絞首刑とし、12月23日執行した。その中には唯一の文官である元首相、広田弘毅も含まれていた。

 判決には日本人以外からも強い批判があった。特に裁判で判事をつとめたインドの国際法学者、ラダビノード・パールは全員の無罪を主張した。その上で長大な意見書を書き、戦争後につくった事後法で裁いたことや共同謀議の成立を批判、日本に原爆を落とした米国が「人道上の罪」を裁く資格にまで疑問を投げかけた。

 裁判を主導した連合国軍最高司令官、マッカーサー自身ですら後に、米上院の軍事外交合同委員会で証言、日本の戦争目的を「主として自衛のためであった」と述べ裁判を貫いた日本の侵略戦争説を事実上撤回している。

 にもかかわらず、それから70年近くたった現在、靖国神社にA級戦犯が合祀(ごうし)されていることを理由に、中国や韓国などに同調し首相の靖国参拝に反対する日本人が依然多い。戦勝国から押しつけられた「東京裁判史観」の呪縛から抜け出せないでいるのである。(皿木喜久)

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【用語解説】東京裁判の構成

 勝者が敗者を裁いた東京裁判では、検察官はもとより11人の判事もすべて戦勝国の連合国から選ばれた。弁護団は日本と連合国双方で構成された。

 このため弁護側が提出した証拠資料は32%が検察側の主張や裁判官の判断で却下された。却下された資料は当時の日本政府、軍部等の公的声明をはじめ、共産主義の脅威や中国共産党に関するもの、満州事変以前の満州人の自発的民族運動に関するものが含まれ、連合国側の違法行為を示す証拠資料も大半却下された。逆に検察側証拠の却下は3%だった(産経新聞社『教科書が教えない歴史』)。

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