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【解答乱麻】日本漢字能力検定協会代表理事・高坂節三

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【解答乱麻】
日本漢字能力検定協会代表理事・高坂節三

 ■日本の先生は自信を持って

 昨年、アラブ首長国連邦の大統領補佐官で教育部門担当をしている方が、日本の初等教育の現場を見せてほしいということで来日された。

 かつて私が学校運営連絡協議委員をしていたつながりから地元の小学校にお願いして学校内を案内していただいた。校長先生の案内で校内を見て回った後、昼食は学校給食を一緒にし、地元の教育委員会の指導担当の主事にも参加してもらって、教育事情について意見交換をした。

 大統領教育担当補佐官は、「アラブ首長国の方が教育予算は多いのに、教育内容が低いのは先生に問題があるように思える」と話し、「多くの先生は教育を天命だと思わず、他の仕事とかけ持ちをしたり、小銭がたまったりするとすぐ辞めてしまう」とこぼしておられた。

 近隣諸国からの「出稼ぎ先生」にも問題があるようだ。日本の教育事情の説明の後、校長先生は「日本の先生は一般的に一生涯、学校教育に尽くす気持ちで毎日を過ごしている」と答えられた。

 事実、海外に駐在していると、2部制の半日授業も多く、学校の授業だけでは食べていけないので、内職をする先生の多いことに気づかされる。ブラジルに赴任していた時代の私の秘書は、英語の先生を辞めて、私の所に来てくれるという状況であった。

 一時期、世界で最も進んだ教育をしているのはフィンランドであるといわれ、競い合ってフィンランドに視察に行ったこともあった。フィンランドを代表する通信機器メーカーのノキア社の代表が、「なぜノキアは業績が伸びないのか」と聞かれたときに、「フィンランドの教育が悪い、平均点は高いが、個性的かつ独創的な人材が育たない」と言ったという報道もある。

 教育問題を話しだすと限(き)りがないほど議論が沸騰する。しかし、私は多くの学校訪問をし、授業参観もした印象では、日本の教員の能力と熱意については、大したものだと評価している。

 6月に新聞報道された、経済協力開発機構(OECD)の中学校教員を対象にした勤務環境などの国際調査結果を読むと、「生徒指導に対する自信のなさ」と「生徒に向き合う時間が少なく、学校運営業務や一般的事務業務に忙殺されている」と報告されている。

 こうした結果をみると、学校の先生に責任があるよりも、むしろ周りの環境がそうさせているように思える。

 「自信のなさ」については、保護者の過剰な要求と、なにか問題が起これば、それだけを大きく取り上げるマスコミなどが先生にことさらに心配の種を植え付けていないだろうか。

 「生徒に向き合う時間が少ない」のも、監督官庁や教育委員会が何か起こるたびにアンケートなどの調査を学校に依頼し、先生方はこれの応対に忙殺されているのではないか。

 学校と保護者(PTA)をつなぐためには、教員資格はなくとも、企業などで活躍した退職者に協力をお願いして、こうした事務の仕事とか、不登校対策、いじめ対策に手を借りることはできないものか。先生が天命と考える生徒指導に全力尽くせるような環境整備とともに、先生自身がもっと自信を持って教育に専念してもらいたいと思う。

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【プロフィル】高坂節三

 こうさか・せつぞう 経済同友会幹事、東京都教育委員など歴任。平成23年春から漢検理事長で現在、代表理事。兄は政治学者の故高坂正堯(まさたか)氏。

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