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死亡率高い敗血症 救命には早期診断・治療

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死亡率高い敗血症 救命には早期診断・治療

 感染症をきっかけに全身の臓器が急激に傷害を受ける「敗血症」。3人に1人が亡くなるといわれ、脳卒中や心筋梗塞より死亡率が高いとされる。だが、早期発見と早期治療で死亡率は減らすことができる。(油原聡子)

 ◆急速に悪化

 東京都江戸川区の会社員、鈴木良樹さん(57)=仮名=は平成17年12月、胆石の検査のために入院中、重症急性膵(すい)炎を発症し、容体が急変。翌日には体も動かせず、意識もなくなった。医師は「多臓器不全を起こし、敗血症になっている。重篤な状態です」と告げた。妻の美恵子さん(58)=同=は「敗血症も多臓器不全も聞いたことがなかった。このまま死んでしまうと思った」。

 検査から約1週間後、治療設備の整った病院に転院し、一命を取り留めた。しかし、意識回復まで約1カ月。傷害を受けた臓器の治療や手術、リハビリで、入院生活は延べ2年に及んだ。

 ◆命の危険も

 敗血症は、感染症などで体に病原体(細菌など)が侵入したことをきっかけに激しい炎症が全身に起こる。病原体が侵入すると体を守るために体内で炎症反応が起こるが、この炎症反応が過剰となり、臓器を傷つけてしまう。重症化すると、多臓器不全やショックを引き起こし、生命が危ぶまれる状況になる。

 重症敗血症の死亡率は25~40%とされ、心筋梗塞(3~10%)や脳卒中(9%)より高い。発展途上国では衛生環境や栄養状況の悪さから、先進国では高齢化や高度医療を受けた後の免疫機能の低下、多剤耐性菌の出現などで、それぞれ敗血症患者は増えている。

 日本集中治療医学会の敗血症の診療指針(日本版敗血症診療ガイドライン)では「重症敗血症/敗血症性ショックにおいては、初期治療の失敗は死亡率増加に寄与する」として、素早い判断と治療開始を求めている。治療が遅れると、数時間や1日単位で急激に悪化することが多い。しかし、医療者間でも敗血症への理解は低い。

 指針を取りまとめた千葉大の織田成人教授は「敗血症で多臓器不全を起こせば、ほとんど助からないと考える医師もいる。しかし、早期に診断・治療すれば救命率は上がる」。

 敗血症は、原因となる感染症を抗菌薬や外科手術などで治療する。特に呼吸や血圧の維持・管理を同時に進める救急医療が必要になるため、集中治療室(ICU)を持つ医療機関での治療が求められる。

 罹患(りかん)しやすいのは子供や高齢者のほか、手術後や糖尿病の患者らさまざま。抵抗力の弱い人や基礎疾患があると重症になりやすいという。国立成育医療研究センター病院の中川聡医師は「敗血症はどんな感染症でも起きる。日常の手洗いやワクチンなどが敗血症の予防では重要」と話している。

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 ■9月13日は世界敗血症デー

 世界の敗血症治療に従事する医療者でつくる国際団体は2012年、毎年9月13日を世界敗血症デーと制定した。日本では今年、日本集中治療医学会が同日、横浜市のランドマークホールで無料の市民公開講座を開く。

 同学会によると、世界では年間2000万~3000万人が敗血症に罹患しているという。重症敗血症の死亡率は先進国でも30%前後とされ、世界的な問題と認識されている。

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