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「キン肉マン」続編再開から3年 「WEB版のみ」心境複雑

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「キン肉マン」続編再開から3年 「WEB版のみ」心境複雑

「WEBコミックのパイオニアになりたい」と語る嶋田隆司さん(栗橋隆悦撮影)

 ■被災者の言葉で決心

 昭和62年に連載が終了した人気漫画「キン肉マン」の続編が再開してからまもなく3年。ビッグタイトルでは初となるWEB版のみでの連載は、往年のファンだけでなく、業界にも衝撃を与えた。紙からデジタルに移行し、四半世紀ぶりとなる再開の裏側には何があったのか。原作者の葛藤、東日本大震災の経験、そして漫画家人生を懸けた決意-。複雑に交錯するプロ意識が生んだ“復活劇”の舞台裏に迫る。(白岩賢太)

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 キン肉マンは、昭和54年5月に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載スタート。折からのプロレスブームも重なり、58年からはテレビアニメが放映され、相乗効果で「キン消し」などのキャラクター商品も大ヒット、一世を風靡(ふうび)した。

 連載は8年間で終了したが、平成23年11月に続編となる新シリーズが再開。雑誌ではなく、週刊プレイボーイのニュースサイト「週プレNEWS」で毎週1話ずつ公開され、読者は無料で読めるようになった。

 「最初は『WEBコミックなんて誰が読んでるんやろ?』と腹立たしい気持ちがありました。僕の相棒も『復活するなら雑誌でやりたい!』って猛反対してたんですよ」。22年、同サイトの担当編集者からWEB版での連載を依頼された原作者「ゆでたまご」の嶋田隆司さん(53)は、当時を振り返る。

 このころ国内の電子コミック市場は、500億円前後。紙媒体と比較しても8分の1程度にすぎず、国民的人気漫画家としての地位を築いた2人が、将来を悲観して思い悩むのも無理はなかった。葛藤を続ける2人の心境が変化するきっかけになったのは、3年前の東日本大震災だった。

 「あの経験は大きかったですね。それと同時にインターネットのパワーも思い知らされました。週刊誌だと遠隔地の読者に届くのが遅れても、ネットはアップした瞬間に全世界で見られるじゃないですか」

 担当編集者からも「次はウェブの世界でパイオニアを目指しましょう」と背中を押された。2人とも気持ちは一気に揺れ動いたが、最も大きかったのは新作を待ちわびる被災者たちの顔だったという。「被災地で漫画教室を開いたとき、小さいお子さんから『震災後、お父さんとお母さんがこんなに楽しそうな顔をしたのは初めて』と言ってくれたんです。あの言葉で決心がつきましたね」

 ビッグタイトルで初の電子配信が始まると、往年のファンを驚かせただけでなく、出版界にも衝撃が広がった。連載は既に100話を超え、単行本の売れ行きも好調だ。嶋田さんのツイッターには毎日のように読者から感想や激励のコメントが数多く寄せられているという。「本当にありがたいですね。みんながキン肉マンの出番を待ち望んでいてくれたんですから」

 今年で35年目を迎えた漫画家人生。日本を元気づけるためにも、後進に道を開くためにも、原作者・ゆでたまごの挑戦は続く。

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【プロフィル】ゆでたまご

 嶋田隆司さんと中井義則さん(53)の共同ペンネーム。嶋田さんがストーリーを担当し、中井さんが作画を担当。2人とも大阪市出身で、小学生時代からの同級生だったが、高校卒業後に上京しデビュー。代表作のキン肉マンのほか、「闘将!!拉麺男(たたかえ!!ラーメンマン)」や「ゆうれい小僧がやってきた!」、キン肉マンの息子が主人公の「キン肉マンII世」などのヒット作を世に送り出した。

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 MSN産経ニュースに「誕生秘話」を掲載しています。

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