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【マンスリー囲碁】高尾十段に感じる普通の美学

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【マンスリー囲碁】
高尾十段に感じる普通の美学

 今月4日に行われた高尾紳路十段(37)と謝依旻(しぇい・いみん)女流名人(24)の合同就位式に、「ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ」などで知られる映画監督の根岸吉太郎氏(63)がお祝いに駆けつけた。

 根岸氏と高尾十段の出会いは十数年前にさかのぼる。根岸氏の盟友で53歳の若さで亡くなった相米慎二監督が生前、高尾十段の師匠である藤沢秀行名誉棋聖(1925~2009年)の生き方にひかれ、映画を撮影するために藤沢氏のもとを訪れた縁がきっかけだったという。

 アマチュアの大会にも出場(有段レベル)し、囲碁界に知己が多い根岸氏は、高尾十段について「個性的な棋士が多いなか、師匠とは違ってきわめて普通の人」と評したうえで、こう続けた。「大きなことが起こらない普通の日常生活を描いた小津安二郎作品が、世界で称賛されている。普通の人でありながら、不思議な魅力のある高尾さんを応援する人は、彼のもつ温かさ、強さといった普通の美学にひかれるのでは」

 東北芸術工科大学(山形市)の学長を務めている根岸氏は「(棋風である)厚みの碁で、美しい終局図を作り続けてほしい」と高尾十段を激励。一方で、「国際関係がギクシャクしている昨今、中国や韓国、台湾の棋士と盤面を通じて対話していくことが(日本の)棋士の課題では」と、文化交流がアジア各国とのスムーズな関係に寄与するとの意見も披露。囲碁界の将来を見据えた温かい祝辞に、約300人の出席者は聞きいっていた。(伊藤洋一)

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