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【自作再訪】
石井幹子さん 「東京タワーのライトアップ」 心寄せる「現代のお灯明」
「昼より夜の方がきれい」って言われたい
首都の夜景のシンボル、東京タワー。電波塔としての役割は東京スカイツリーにほぼ譲っても、その姿に安らぎを感じ、心を寄せる人は多いことだろう。でも、若い読者は信じられるだろうか。かつて東京タワーは、日没とともに夜闇に紛れるように立っていたことを。時代が昭和から平成に変わるとき、初めて東京タワーを美しく照らしたのは照明デザイナー、石井幹子さん(75)だ。ライトアップ誕生までの苦闘と、その後の進化について明かしてくれた。(聞き手 黒沢綾子)
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平成元年1月9日。東京タワーのライトアップが正式に始まった日です。25年前ですから、以前の夜景を知らない人が増えるのも当然でしょう。
《年号が平成に改まるとともに夜空を見上げた人々は驚いたという。東京タワーが輝いていたからだ。それは、新しい時代の幕開けを印象づけた》
思えば東京タワーが完成した昭和33年、私は芸大生でした。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」で描かれたように、徐々に高くなってゆくタワーは戦後復興の象徴。皆こぞって展望台に上がっては、「東京じゅうが見渡せる」と喜んだわけです。
でもその後、新宿副都心に超高層ビルが林立し、池袋にも高さ240メートルのサンシャイン60が登場。東京タワーの存在はかすんでいきました。
東京タワーを運営する日本電波塔の当時の社長、前田福三郎さんが私のデザイン事務所にいらっしゃったのは、ライトアップが始まる2年前。「照明を考えてください」。ライトアップが何か、まだ日本でほとんど知られていない頃です。
