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【きょうの人】円城塔さん(41)米フィリップ・K・ディック賞特別賞「生活のためにも、世界で通用する作品を」

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【きょうの人】
円城塔さん(41)米フィリップ・K・ディック賞特別賞「生活のためにも、世界で通用する作品を」

 「栄誉ある賞をうれしく思う。生活のためにも、世界的に通用する作品を目指していきたいと思います」

 大学で物理学を専攻した経験に裏打ちされた科学的知見と、奇想天外な発想。ともすれば「前衛」とも評される実験的な作風で知られるが、エッセーにはとぼけた味わいもにじむ。フィリップ・K・ディック賞特別賞の受賞コメントにも、そんなユーモアがあふれていた。

 昭和47年、札幌市生まれ。東北大学理学部時代はSF研究会に所属し、安部公房にも影響を受けた。東大院の博士課程修了後は、ポストドクター(博士研究員)として北海道大、京都大などを数年おきに転々とする生活。「このままこの生活を続けていくのだろうか…」。次の就職先が決まらない状況で「食べていく手段」として書き始めた小説が、今回の受賞作となった「Self-Reference ENGINE」だった。

 受賞には、偶然も重なった。

 2011年に「ハーモニー」で同じ賞を受けた伊藤計劃(けいかく)さん(09年死去)とは、絶筆「屍者(ししゃ)の帝国」を書き継ぐなど親交が深かった。伊藤さんのノミネートを機に米国を訪れたとき受賞作の版元と知り合い、英訳が実現したのだという。

 「日本ではフィリップ・K・ディック賞のように、翻訳小説と、もともと母国語で書かれた小説を並べて評価することはまずない。だけど小説とは本来、開かれた場へ向けて書かれるもの。そう信じて、今後も精進を続けます」。純文学やSFといった垣根を軽々とまたぐ作品が、今後も楽しめそうだ。(横山由紀子)

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