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「生きる力は命そのもの」 ドリアン助川さん 小説「ピンザの島」

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「生きる力は命そのもの」 ドリアン助川さん 小説「ピンザの島」

 作家で詩人としても活躍するドリアン助川さん(51)が、5年の歳月をかけて執筆した長編小説『ピンザの島』(ポプラ社)を刊行した。心に傷を負い、自殺衝動を抱える青年が、南の島で幻のチーズ作りに挑む物語だ。ハンセン病を扱った前作『あん』に続き、「生きていること自体の価値を訴えたかった」と語る。

 「出生からトラウマを抱えた青年が自分の運命と闘ってゆく、というシンプルな設定。僕は、読んでくれた人に何か救いになるテーマを見つけられないと、小説は書けないんです」

 ピンザとは、沖縄・宮古島の方言でヤギのこと。両親を亡くした青年・菊地涼介は、水道工事のアルバイトとして、他の2人の若者とともに、南海の孤島に渡る。携帯電話も通じず、独特の風習が残る島での生活に若者たちは戸惑うが、涼介の目的は、島に住んでいるはずの、かつて父とともにチーズ作りの夢を追った親友の男性を探すことだった。そしてその男性がかつて挑戦し、失敗したヤギの乳を使ったチーズ作りに再び挑戦する。

 父を自殺で亡くした涼介は幼い頃から、敗北感と自殺願望に悩まされている。ドリアンさん自身も学生時代の複数の友人を自殺で亡くした。「生きていても仕方ない、という虚無感に打ちのめされることは僕にもある。誰にでもそういう瞬間はあるはず。ただ、そういう人ほど、いつか生きていることのみずみずしさを感じられる才能があると思う」

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