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【書評】『ゴーマニズム宣言SPECIAL 大東亜論 巨傑誕生篇』

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【書評】
『ゴーマニズム宣言SPECIAL 大東亜論 巨傑誕生篇』

 ■国を愛し子孫を思った頭山満

 日本人が忘れてしまった日本近現代史を描いた物語である。

 昨今、中国、韓国との外交が行き詰まっている。国内では嫌中、嫌韓感情が高まり、在日コリアンに対するヘイトスピーチが公然と行われるようになった。果たしてそれが愛国なのか-。明治の国士たちの愛国心とはいかなるものだったか、国家というものをどう意識し、アジアをどう捉えていたか、本書は日本人の原点にいま一度たち帰る。

 主人公の頭山満は自由民権運動が盛り上がるなか、政治結社・玄洋社を率い、欧米の帝国主義から日本とアジアを守ろうと奔走した。幕末に生まれ、終戦前年の昭和19年まで生きた頭山の一生には、黒船来航から大東亜戦争までが起きた。近現代史の体験者である。

 その頭山の活躍を通じて、当時の日本人が何を考えていたのかが浮き彫りになる。たとえばルソーの社会契約論を日本に紹介した中江兆民との交流。戦後、GHQ(連合国軍総司令部)から右翼の源流とレッテルを貼られた頭山と、左翼の代表格のように扱われる中江は生涯親友であった。右翼でも左翼でもない、まだそんな概念が定着していなかった時代に、素朴に国を愛し、子孫の未来を思っていた。

 著者は6年後の東京五輪が国家の大目標のように騒いでいる政治家を「近視眼的」と批判する。本書に登場する明治の国士たちは100年後の国家、子孫のことを考えていた。いま、日本人が思い出さなくてはいけない歴史である。(小林よしのり著/小学館・1890円)

 小学館 サピオ編集部 中澤廉平

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