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【鈍機翁のため息】(22)間奏 III ドン・キホーテの呪い

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【鈍機翁のため息】
(22)間奏 III ドン・キホーテの呪い

 昨年末、興味深いニュースが飛び込んできた。「未来世紀ブラジル」で知られるテリー・ギリアム監督が、ドン・キホーテの映画化に着手するというのである。なかなか執念深い男だ。

 ギリアムは2000年に「ドン・キホーテを殺した男」の制作に着手したものの、信じられないようなトラブルが重なり、クランクインから1週間で制作を諦めている。その顛末(てんまつ)はキース・フルトン監督のドキュメンタリー映画「ロスト・イン・ラ・マンチャ」で見ることができる。

 ギリアムには悪いが、まことに面白い作品だった。もともと悪相のギリアムが日々その度合いを強めていくのである。それも無理はない。用意されていたスタジオがまったく使い物にならなかったり、撮影中に戦闘機F16が爆音を響かせて飛び回ったり、鉄砲水でセットがすべて流されたり…。揚げ句の果て、キホーテを演じるジャン・ロシュフォールが椎間板ヘルニアの激痛でフランスに帰国してしまう。

 欧米には「ドン・キホーテの呪い」という言葉があるという。「第三の男」のオーソン・ウェルズが映画化に着手するものの、完成できないまま亡くなったところからささやかれ始めたらしい。ギリアムの災難を見てしまうと、さもありなんと思ってしまう。

 わが国では映画や舞台で「四谷怪談」を制作する前には、スタッフとキャストが必ず於岩(おいわ)稲荷にお参りするというが、欧米には安全祈願をするありがたい聖地はないのかしらん。(桑原聡)

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