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【書評】『神功皇后の謎を解く 伝承地探訪録』河村哲夫著

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【書評】
『神功皇后の謎を解く 伝承地探訪録』河村哲夫著

 ■“幻の女帝”実際の足跡たどる

 日本古代史の重要な女性を3人選ぶとすれば、卑弥呼(ひみこ)、天照大神(あまてらすおおみかみ)、そして神功(じんぐう)皇后と言われる。

 と書くと「おや?」と思われる方が大半だろう。前2者についてはともかく、神功皇后をご存じの方はそう多くないはずだ。

 神功皇后は、『古事記』『日本書紀』をはじめ、多くの史料におびただしい量の記述がある。女性ながら九州北部の熊襲(くまそ)を討伐し、朝鮮半島に進出した、きわめて重要な人物として描かれているが、太平洋戦争後はその存在自体がほぼ否定されるようになった、言わば幻の女帝である。

 本書の内容をごく短く言えば、神功皇后の九州平定~新羅進出の足跡を検証した本、ということになる。

 ただし、本書の著者のすごいところは、「足跡」を「そくせき」ではなく「あしあと」と読みたくなるほど、九州北部を中心とする多くの伝承地をくまなく訪れ、神功皇后が歩いたとされるルートを実際にたどっている点にある。

 どんな道や川を進んだのか、どんな地形だったのか…それを知るために著者は実際に足を運ぶ。各地の伝承、地名の由来、神社資料も調べている。もちろん大量の史料を読み、検証したうえでの取材である。

 「この本をガイドブックに歩けば、そこには時空を超えた風景が広がるであろう。神功皇后が見たであろう古代の姿が見えてくるはずである」と著者は書く。

 じっくり時間をかけて書いた、渾身(こんしん)の古代史フィールドワークである。(原書房・3675円)

 原書房編集部 中村剛

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