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【ゆうゆうLife】フランス生まれの認知症ケア「ユマニチュード」

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フランス生まれの認知症ケア「ユマニチュード」

背景に患者の増加と治療困難

 医療機関でこうした技法が求められる背景には、認知症の入院患者が増え、治療が難しくなっていることがある。認知症の人は入院や治療の理由が理解できず注射を嫌がって暴れたり、点滴を抜いたりすることもある。拘束や鎮静剤の使用も珍しくないが、「動けない状態」にすれば患者の全身機能は低下する。医療職は矛盾に悩むのが現状だ。

 全日本病院協会・プライマリ・ケア検討委員会の小川聡子(としこ)医師は研修会の冒頭、参加者に「認知症の患者さんを精神科へ送っても問題は解決しない。抑制はしたくない。しかし、(抑制を避けて)院内で転倒されて事故報告を書き、心が折れそうになる日々ではないでしょうか」と挨拶した。

 医療機関の中には、徘徊(はいかい)や管を抜くなどで他の患者に危害を与えかねない認知症の人を断る所もある。

 小川医師は「断らない病院では、尊厳を持って患者さんに対応したいのに方法が分からず、結局、医療職が疲弊してしまう。ユマチュードは医療職の心に響く方法だと思う」と言う。会議後、参加者からは「病院に帰ったら、早速、実践してみたい」と、期待に満ちた声が上がっていた。

「同じ目の高さで話す」が最も大切

 嫌な相手、関わり合いになりたくない相手と視線を合わせないようにした経験はないだろうか-。ユマニチュードには4つの柱があるが、家庭でもできる3つを示した。

 最も大切なのは「見る」こと。相手を威圧する見下ろす視線や、斜めや横からの視線は避け、同じ目の高さで話す。対等な関係を伝えるためだ。認知症の人は視野が狭いため、近づくときは正面から近づき、鼻先20センチくらいの距離から見る。チラッとではなく、「0.4秒以上」(本田医長)見る。

 話すときは前向きな言葉を選ぶ。医療機関では「おはようございます。点滴です」より、「おはようございます。良い天気ですね」と話を始めることが推奨される。会話を楽しんでいる雰囲気を伝えるためだ。相手の反応がなくても黙りこまない。2人で体を拭くときは、一人が患者の体を支えて前から向き合い、視線をとらえて話す役になり、もう一人が体を拭く役になる。

 立てる人には、歯磨きや清拭の際に立ってもらう。筋力保持のためだけでなく、立つことで視界が開け、より多くの情報が届くという。

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