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大江健三郎賞 本谷有希子さん 短編集「嵐のピクニック」

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大江健三郎賞 本谷有希子さん 短編集「嵐のピクニック」

 ■常識から解き放たれた普通の人々

 「書きながら自分の小説観が音を立てて変わっていくのが分かった作品。評価されて本当にうれしい」。短編集『嵐のピクニック』(講談社)で、第7回大江健三郎賞に選ばれた作家で劇作家の本谷有希子さん(33)は、転機と位置づける作品での受賞を喜ぶ。

 受賞作は10~20ページほどの短編13本を収める。ボディービルを題材に、主婦の鬱屈と孤独を浮き彫りにした「哀しみのウェイトトレーニー」、ユーモラスな質問と回答だけで時間の進行をつむぐ「Q&A」…。奇抜な設定が光る短編群は《当の作家が「人生の習慣」として担い続けてゆくはずの人間観察、(中略)それをムダなく書きあらわす散文の力があります》(大江健三郎さんの選評)と評された。

 「小説に対する勝手な思い込みを全部忘れて、自由に書いてみよう」と、テーマ性や細かな設定を意識せずに筆の勢いに任せて書き上げたという。自意識過剰な女性の暴走を描くことが多かったこれまでとは対照的に、普通の人々が現実から浮遊した世界に入るおかしみが切り取られる。「もっと自由に、もっと自由に…と書きながらフィクションの筋肉を付けていっている感覚で、最後には宇宙人も出てきました(笑)。でも読み返してみると『常識から解き放たれる』という主題を繰り返し書いてる。テーマを意識しないでも自分の書きたかったことに深いところで触れられる、というのも発見でしたね」

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