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【話の肖像画】「断捨離」提唱者・やましたひでこ(59)(1)

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【話の肖像画】
「断捨離」提唱者・やましたひでこ(59)(1)

 ■“強烈な母”との葛藤 赤裸々に

 〈女性を中心にブームを巻き起こした『断捨離(だんしゃり)』。単に不要なモノを処分し、執着心を無くすだけではない。モノ・コト・ヒトとの関係を見直す「人生の片づけ」であり、生き方そのものだ。それは、親子や家族関係にも当てはまる。やましたさんは最近、50年も苦しみ続けた「母の価値観(観念)」を手放した…〉

 母と私は価値観が正反対。裕福な家のお嬢さんとして何不自由なく育った母(昭和4年生まれ)は、家事が大嫌い。モノやお金への執着心が強く、何でもため込んでしまうから家の中は散らかり放題。そして、子供は親の言うことを聞くのが当然と考えている…。一言でいえば“強烈な存在”で、幼いころの私はとても逆らえませんでした。母に認めてもらいたい気持ちもありましたしね。無意識に自分を偽り、“母の価値観の呪縛”にとらわれていたのです。

 大人になって「断捨離」に目覚めた私は、母が入院している最中に、不要と思われるモノをどんどん捨てました。子供のころの“復讐(ふくしゅう)”だったかもしれません(苦笑)。後で知った母の怒ることと言ったら…。「きれいになったわね」と少しぐらいは喜んでくれる、と思っていたから激しいバトルの勃発です。それを幾度、繰り返したことか。思えば今度は「私の価値観」を母に押しつけていたのでしょうね。

 結局、私は「母の価値観」から抜け出すことを決めました。母には母の価値観がある。私の価値観はそれとは違う。自分を評価し、行動を決めるのは「自分の価値観」であって「母の価値観」ではない、とね。親子関係の「断捨離」です。50年かかりました。もっとかかる人もいますよ。親の価値観を否定してしまうことにどうしても罪悪感があるからです。

 そういう母娘の葛藤に悩み続けている人がどれだけ多いことか。仕事が自己実現の対象となる場合が多い父親(男性)と違って、母親は娘を「自分の思い通りの存在にしたい(自己実現の対象)」と思いがちです。そのために過干渉になったり、厳しく当たったり。同じ女性として「嫉妬する」ことも。仲がよくても、ふとした機会に悪感情に気づくことがあるのです。

 〈母の価値観を手放すことを決め、その葛藤を赤裸々に雑誌などに書くことにした〉

 最初はとても書けなかった。本当は母と私のことなのに第三者のエピソードのように書いたりもしましたね。でも思い切って文章にしたことで母への感情を改めて自覚し、俯瞰(ふかん)、客観化することができました。「心の片付け」ができて、母のことも少しは見えてきた気がします。40代、50代は、親子の位置取りを見直し、自立した相互信頼関係を築くチャンスですよ。

 「母は子を慈しみ、子は母を慕うべきだ」というステレオタイプな考え方にはこだわらなくてもいいのです。「母娘の葛藤」なんてどこにでもある。そう考えた方が気持ちはラクでしょう。それぞれの価値観を認め合うことで、互いに尊重できる。心に余裕ができて、よりいい関係をつくることもできるのです。(聞き手 喜多由浩)

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【プロフィル】やましたひでこ

 昭和29(1954)年、東京都出身。早稲田大学文学部卒。大学在学中に入門したヨガ道場で出会った哲学「断行・捨行・離行」を日常生活に応用、『断ち・捨て・離れ』という“引き算の解決法”で停滞を取り除き、住まい、気持ち、人生の新陳代謝を促進する。平成13年から「断捨離セミナー」を開始、講演を含めたセミナー受講者は1万人を超える。近著に『50歳からラクになる人生の断捨離』(祥伝社)。石川県在住。

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