川崎市の光化学スモッグ減らず 注意報発令が昨年超え

 

 川崎市内で今夏に発令された光化学スモッグ注意報が12日までに計6回を数え、昨年の発令数(計4回)を上回っている。原因物質となる光化学オキシダント濃度はここ数年、高止まりしており、国の環境基準達成は遠い。大気汚染のイメージが根強い同市の担当課は「発生のメカニズムを知ることや、危機意識の向上が削減への第一歩となる」として、大気環境の改善に努めている。

 「光化学スモッグ注意報が発令されました。屋外での激しい運動は控えましょう」。日差しの強い暑い日、ものものしい防災無線が市内に響きわたる。

 複雑な発生原因

 川崎市民が一度は耳にする放送だ。京浜工業地帯の中核として発展してきた同市は、大気汚染との戦いの歴史が長く、大気環境が大幅に改善されたいまも「空気が悪い」というイメージは根強い。

 微小粒子状物質「PM2・5」やNOx(二酸化窒素)は、全測定局で環境基準を達成するなど成果を上げているが、この光化学オキシダントについては、なかなか改善が進まないのが現状だ。福田紀彦市長は記者会見で「発生原因が非常に複雑。数値をどう下げていいのか…」と述べ、手をこまねいている様子をうかがわせた。

 昭和45年度の測定開始以来、大気中の濃度が一番高かったのが49年度で、昼間の年平均値が0・037ppm。その後改善し、61年度には最少値の0・013ppmにまで減少した。

 ただ、そこから再び悪化し、現在まで上昇傾向が続く。平成25年度以降は5年連続で0・032ppmを記録。最悪時の86%程度となっている。

 酷暑で濃度抑制か

 一方、注意報の発令回数は、25年度に11回を記録して以降、1桁台が続く。昭和46~50年ごろの20回超の記録に比べると、大幅な減少だが、60年度前後には年間0回や1回などという年もあり、発令回数が減少傾向とは言い難いという。

 光化学スモッグの原因物質は主に工場の煤煙(ばいえん)や自動車の排気ガスに含まれるNOxや揮発性有機化合物(VOC)だ。これらが太陽光の紫外線を浴びることで、光化学オキシダントが発生する。

 気温が高いほど発生しやすいように思えるが、仕組みはそう単純ではないようだ。国立環境研究所などの研究によると、「光化学反応は気温や日射などが関与するが、濃度は気温との単純な相関関係はない」としている。

 ただ、市環境局の担当者は「暑いほど上昇気流などで風が強まり、拡散する。今夏のような酷暑のときは濃度が抑えられやすい」と解説。「もし平年並みに風が弱ければ、発令回数はさらに増えていたかもしれない」と述べ、胸をなで下ろした。

 他の都市に影響も

 測定地点は市内に9カ所あり、1カ所でも基準値を超えると、市内全域に発令される。これは横浜市や相模原市など神奈川県内のいずれの自治体でも仕組みは同じだ。

 同県内の今夏の発令日数は計7日(12日現在)。そのうち6日は川崎が絡んでいる。横浜は計4日、相模原、西湘、県央の各地域がそれぞれ2日、横須賀、湘南の各地域がそれぞれ1日。三浦地域は発令されていない。

 川崎市環境局大気環境課の中村弘造課長は「風向きによって東京都内や埼玉県、千葉県など県内外の地域に影響を及ぼすこともある」とした上で、「濃度が高まったときには、工場に稼働抑制をお願いするなど、取り組みを進めていきたい」と話している。

 【光化学スモッグ】

 人体への影響や症状は、めまいやせき、目がチカチカするなど。重症化すると嘔吐(おうと)や呼吸困難、意識障害などに陥る。国の環境基準は昼間の1時間の値が0・06ppm以下。「注意報」発令の基準値は0・12ppm以上。さらに濃度が高まり、0・24ppm以上で「警報」、0・40ppm以上で「重大緊急時警報」となる。川崎市内で警報は昭和47年度と50年度に各1回発令。重大緊急時警報の発令はない。