【アート 美】アムステルダム国立美術館 黄金の輝き詰まった空間 - 産経ニュース

【アート 美】アムステルダム国立美術館 黄金の輝き詰まった空間

 光と影があやなす静寂の世界を描いた画家、ヨハネス・フェルメール(1632~75年)。その現存作35点前後のうち、7点が画家の故国オランダにある。首都のアムステルダム国立美術館に4点、政治の中心都市、ハーグのマウリッツハイス美術館に3点。地元でフェルメールの絵はどう見えるのか、期待を胸に訪ねた。
 同国随一の文化の殿堂、国立美術館には80もの展示室があるが、ハイライトはなんと言っても「名誉の間」だ。館の至宝、レンブラントの集団肖像画「夜警」を筆頭に、17世紀オランダ絵画の傑作を集めた大空間。大航海時代、経済的にも文化的にも栄華を極めたオランダ黄金期の輝きが詰まっている。
アムステルダム国立美術館「名誉の間」。その一角に、フェルメールの4点を含む同時代の風俗画が整然と並ぶ
 自画像などレンブラントの傑作群、陽気な家族の喧噪(けんそう)が聞こえてきそうなヤン・ステーンの風俗画、生気に満ちあふれたフランス・ハルスの肖像画、ロイスダールの雄大な風景画…。巨匠らの作品が個性を競い合っている。
 フェルメールの4点-「小路」「牛乳を注ぐ女」「青衣の女」「恋文」も、デ・ホーホら同時代の風俗画とともに、人の目の高さに整然と展示されている。大作の「夜警」などと比べて、フェルメールの作品はいずれも小さい。ただ、静かな存在感にひき寄せられるように、絵の前には絶えず人だかりができていた。
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 スペインの支配から独立し、共和国となった17世紀オランダの美術市場は、欧州の他国と大きく異なっていた。絵画の需要層は王侯貴族や教会ではなく、羽振りのよくなった市民。「画家が自由なマーケットで絵を売るようになった最初の時代。市場の中で、彼らは自分の専門性や得意分野を定めていったのです」。同館の絵画彫刻部門キュレーター、ピーテル・ルーロフス氏はこう説明する。
 17世紀の間にオランダで制作された絵画は500万点とも1000万点ともいわれる。「高価な作品もあれば小銭で買える絵もあり、どこの家にも絵画が飾られていたと考えていい」
 生前高い評価を受けていたフェルメールの作品は「1点およそ300~400ギルダー、平均的な職人の年収2年分ほどではないか」(ルーロフス氏)という。1670年代になるとフランス軍の侵攻などでオランダ経済は不況に陥り、美術市場も打撃を受けた。子だくさんのフェルメールが43歳の若さで没した後、一家はパン屋への借金を絵で支払ったとされる。
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 再び「名誉の間」に戻ろう。フェルメールが20代後半に描いた傑作「牛乳を注ぐ女」は同館でも格別の人気を誇り、職員にとっても思い入れの強い作品という。「私たちは親愛を込めて“彼女”って呼んでいるんですよ」とルーロフス氏。
 飾り気のない日常を描く写実性、表象に隠された多層的な意味、巧みな色彩構成、光と影のコントラスト…。縦約45センチ、横41センチの小さな画面に「オランダ美術のエッセンスが詰まっている」という。
ヨハネス・フェルメール「牛乳を注ぐ女」(1658~60年頃)に見入る観客たち
 10月5日から上野の森美術館(東京)で始まる「フェルメール展」に出品するため、“彼女”はもうすぐアムステルダムから旅立つ予定だ。(黒沢綾子)
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 ■美の空間マウリッツハイス
 初期の物語画「ディアナとニンフたち」、風景画の「デルフトの眺望」、そしてトローニーと呼ばれる人物画「真珠の耳飾りの少女」。ハーグのマウリッツハイス美術館では、フェルメールの表現の「幅」を味わうことができる。かつて貴族の邸宅だった瀟洒(しょうしゃ)な同館での絵画鑑賞は、何より贅沢(ぜいたく)なひとときだ。
 トローニーとは不特定の人物の頭部を描き、ある種の類型を表現したもの。異国趣味の衣装をまとう例も多く、「真珠の耳飾りの少女」は頭に青いターバンを巻いている。どこまでもミステリアスで、ずっと見ていたくなる作品。
マウリッツハイス美術館の至宝、ヨハネス・フェルメール「真珠の耳飾りの少女」(右)(1665年頃)
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 ■アムステルダム国立美術館
 オランダの芸術・歴史を総覧する国内最大の美術館。中世から現代までの芸術作品、歴史遺物を所蔵する。1885年、建築家カイパースの設計で現在の地に開館。10年に及ぶ大規模改修を経て、2013年にリニューアルオープンした。
 マウリッツハイス美術館 1822年開館。オランダ総督のオラニエ公ウィレム4世と5世のコレクションを基礎とする。レンブラントの出世作「テュルプ博士の解剖学講義」など、17世紀オランダ絵画が充実している。取材協力‥オランダ政府観光局 www.holland.com
アムステルダム国立美術館の壮麗な外観。中央の門は歩行者や自転車が通り抜けできる
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 【ガイド】「フェルメール展」(産経新聞社など主催、特別協賛:大和ハウス工業、ノーリツ鋼機 協賛:第一生命グループ、リコー)は10月5日から平成31年2月3日まで、東京都台東区上野公園1の2、上野の森美術館。国内展最多のフェルメール8点を含む、17世紀オランダ絵画の名品約50点を展示する。
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 待ち時間短縮のため「日時指定入場制」を導入します。希望の日と時間枠を選び、インターネットなどからチケットを事前購入する方式。現在11月末までの「前売日時指定券」を販売中。なお「当日日時指定券」は、余裕のある枠のみ販売します。来場者全員に音声ガイドを無料貸し出しします。問い合わせは(電)0570・008・035(会期前=午前10時~午後6時/会期中=午前9時~午後8時)