さくらももこさん襲った乳がん 恐れず、正しく病状別の治療を

 
検診が有効ながんと無効ながん

 8月に53歳で急逝した国民的漫画・アニメ「ちびまる子ちゃん」の作者、さくらももこさんを襲った乳がん。女性の30歳から64歳の死亡原因ではトップの病気で、それだけに恐れる人は多いが、病状にはさまざまなタイプがある。治療法やその後の経過も異なってくる。専門家は「乳がんは特別な病気ではない。正しい情報を身に付けてがんと向き合い、闘ってほしい」と呼びかける。(平沢裕子)

 ◆急速に進む場合も

 国立がん研究センターによると、平成25年に新たに乳がんと診断されたのは約7万7千人で、28年に乳がんで死亡した人は約1万4千人。多くのがんが60歳以降と高齢になるほど増える中、乳がんは40歳から増え始め、発症が最も多いのが40代後半だ。

 早期に発見された乳がんの9割は治るとされ、早期発見・治療のために検診の大切さが叫ばれることが多い。ただ、日本医科大武蔵小杉病院腫瘍内科の勝俣範之教授は「乳がんの中には進行が速くて検診で見つけられないものもある。検診は大事だが、検診さえ受けていれば大丈夫なわけではない」と指摘する。

 がんは、その増殖するスピードによって、急速がん▽のんびりがん▽超のんびりがん▽進行しないがん-の4つに分類できる。乳がんには「急速がん」も「のんびりがん」もあり、同じ人でも最初はのんびりがんだったのに、再発して進行が速くなることもある。検診でも見つからずに亡くなってしまう人がいるのはこのためだ。

 ◆検診推奨は40歳以上

 検診は、日本では40歳以上の女性に、問診と乳房X線検査(マンモグラフィー)を2年に1回行うことが推奨されている。昨年6月、フリーアナウンサーの小林麻央さんが34歳で乳がんで亡くなった後、乳がんへの不安からか20~30代で検診を受ける人もいた。

 しかし、若年性(20代、30代)の乳がん検診は日本だけでなく国際的にも推奨されていない。偽陽性(実際はがんでないのにがんと診断)の結果が出て、不必要な再検査や、X線による被曝でがんのリスクが高まる可能性があり、検診を受けるメリットより、害の方が大きくなる。

 ちなみに、米国や英国では、乳がん検診の有効性が認められる年齢を50歳から74歳までとし、40代の検診を推奨していない。若年性乳がんと同じで、有効性よりも不利益の方が上回るとされるからだ。

 ◆症状あったら受診

 自分の乳房を鏡に映してみたり手で触ったりする「自己触診」はどうだろう。日本では定期的な自己触診を勧める医師もいるが、実は有効性が証明されていない。海外で実施された大規模調査の結果、乳がん発見率は増えるが、乳がんの死亡率は低下しなかったため、有効性はないとされた。この結果から、米国の国立がん研究所のガイドラインでは自己触診は推奨されていない。

 勝俣教授は「乳がんを必要以上に恐れ、過剰に対応するのはよくない。検診は、推奨される年齢・方法で受ければよく、それ以外では乳房のしこりやくぼみなどの変化に気付いた際に医療機関を受診すればいい」とする。

 症状の目安は、乳房のしこりやひきつれ▽脇の下の腫れやしこり▽乳頭から分泌物が出る-など。若い世代でも症状があったときは受診が勧められる。

 ◆標準治療がベスト

 もし乳がんと診断されたら、現段階でベストな治療である「標準治療」を受けることが勧められる。詳しく知るには、国立がん研究センターのウェブサイト(https://www.ncc.go.jp/jp/index.html)が参考になる。

 勝俣教授は「現在は、がんを持ちながらも共存・共生ができる時代になっている。正しい情報を知った上で、がんという病気と上手に付き合っていってほしい」と話している。