「ミケランジェロと理想の身体」国立西洋美術館 500年経て再会した彫刻の傑作 - 産経ニュース

「ミケランジェロと理想の身体」国立西洋美術館 500年経て再会した彫刻の傑作

「ダヴィデ=アポロ」 ミケランジェロ・ブオナローティ 1530年頃 フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館蔵(木奥恵三撮影)
「若き洗礼者ヨハネ」 ミケランジェロ・ブオナローティ 1495~96年 ウベダ、エル・サルバドル聖堂、ハエン(スペイン)、エル・サルバドル聖堂財団法人蔵(木奥恵三撮影)
 イタリア・ルネサンス期を代表する芸術家、ミケランジェロ・ブオナローティ(1475~1564年)。彫刻、絵画、建築の分野で才能を発揮し、「神のごとき」と称された。しかし、自らは絵描きではなく「彫刻家」を自認し、彫刻に格別な思いをいだいていたようだ。大理石彫刻はイタリアを中心に世界で40点ほどしかなく、東京・上野の国立西洋美術館で開催中の「ミケランジェロと理想の身体」では、そのうちの2点を展示している。
 1点は50代半ばを過ぎて手掛けた作品「ダヴィデ=アポロ」。腕をくねり、渦を巻くような造形は力強い。引き締まった筋肉質の身体の美しさは完璧で神秘的だ。人物はダヴィデなのかアポロなのか分からない。聖書の英雄、ダヴィデは、石を投げて大男のゴリアテを倒した。一方、ギリシャ・ローマ神話に登場する太陽神、アポロは弓の名手だった。背中の石の塊が投石器であればダヴィデ、矢筒であればアポロだが、未完成のため不明なのだ。
 もう1点は「若き洗礼者ヨハネ」。20歳を過ぎたばかりの作で、初期の傑作に数えられる。幼児期を過ぎたヨハネの顔にはあどけなさが残り、身体はなめらかで柔らかそう。
 片足に重心をかける姿勢は、古代ギリシャ・ローマ彫刻の古典的なポーズ。古代の美の規範を再現した作品とされる。ダイナミックに変貌した「ダヴィデ=アポロ」の動きのある姿とは対照的でおとなしく初々しい。
 この作品には複雑な歴史がある。ミケランジェロがパトロンだったメディチ家の関係者から注文を受け、制作してまもなく行方不明に。20世紀前半のスペインで発見され、直後に内戦によって破壊されてしまう。2010年から、イタリアで残された石の断片から修復が本格的に始まり、3年後に完了してベネチアで公開された。
 「若き洗礼者ヨハネ」と「ダヴィデ=アポロ」の2作品は、ミケランジェロが生きた時代、フィレンツェで同じ人物が短期間だけ所蔵していたという。くしくも500年の時を経て、初来日した東京で再会を果たした。
 古代ギリシャ人は理想の美を求め、男性の裸体彫刻で美の規範を示した。古代ギリシャとローマの復活を目指したルネサンス美術の中で特に男性の身体の美を追求したのがミケランジェロだった。同展では、大理石彫刻の傑作2点を中心に古代ギリシャ彫刻のほか、ルネサンスの絵画や彫刻など身体を題材とする70点を展示。作品を比較しながら理想の身体を探る展示となっている。(渋沢和彦)
 24日まで(10日休館)、一般1600円。問い合わせはハローダイヤル(電)03・5777・8600。